[広告]
声とことばの磯貝メソッド
ヴォイスチェックサービス

反響対策

部屋には壁がありますから音が壁に当って反響します。反響の仕方や量は部屋の広さや作りや壁の素材によってまちまちです。反響が多いと不明瞭で遠い音になり、言葉も聴きづらくなりますから避けたいものです。場合によってはライブ感を出すために敢えて反響を録る場合もありますが、良い反響を得られる部屋というものは少ないですし、一般的にスタジオ録音は反響のほぼ無い音を録るものです。

では、反響を抑えるにはどうしたらいのでしょうか。いくつかポイントをあげます。

  • 和室・寝室などの反響の少ない部屋を選ぶ
  • カーテンを閉める
  • 壁に布を貼る、衣類を吊るす
  • リフレクションフィルターを使う
  • マイクとの距離を狭くする
  • 指向性の狭いマイクを使う
CAR900.jpg
リフレクションフィルター

ノイズと同様に反響に無頓着なのは困ります。いかにも会議室で録ったような反響の多い音源を提出しては素人感丸わかりですので気をつけましょう。

波形編集ソフトによる音の調整

なぜ調整が必要か

素晴らしい音を最高の録音環境・機器で録音すれば素晴らしい録音物が出来ます。しかし、それでも聴く環境などによっては聴きにくい場合があります。ましてや良くない音源・環境・機器では尚更です。理由はいくつかあります。

電気音響を通した音は生とは違う

録音した音声は音量ひとつ取っても元のパフォーマンスを生で聴いたのとは違ったものになります。MCの音量が小さかったり逆に拍手の音が大きかったり、表現の抑揚も大きな音量差となって聞こえたりします。考えられる原因は、実際に音量差があるけれど生では音以外の情報もあって脳内で補正されている可能性。もうひとつは所詮2チャンネルでは再現性は低いということ。もしかするとバイノーラル録音ならば高い再現性で聞けるのかもしれませんが検証はしていません。

収音がベストとは限らない

ノイズが乗ってしまうかもしれません。その時は可能な限りカットします。低音が強調されて録音されるかもしれません。その時はイコライザーで補正します。音源によるものか環境によるものか原因はどうであれ、聴ききやすさのために原音忠実性を犠牲にしてでも調整する場合があります。

再生環境が良くない場合も考慮
機器の性能が低かったり雑音の多い場所で聴く場合、小さな音が聴き難かったりすることがあります。どんな環境でも無理なく聞こえるように、音量差を少なくしたり、人間の聴覚が捉えやすい周波数帯域や言葉の音声に多く含まれる帯域を強調したりします。
どんな調整が必要か

ノイズ除去
定常的な環境ノイズや突発的な様々なノイズを可能な限り除去、低減します。
>> Audacityによるノイズ除去
>> iZotope RXを使ったリップノイズの除去
音量調整
音量差を、聞きにくくない程度に調整
イコライジング
周波数特性の調整
コンプレッション
全体の(特に小さい音の)音圧を上げる
音源の最終的なレベル調整
外にリリースする音源として最適なレベルにします。
>> 音源の最適なレベルとは

Audacityによるノイズ除去

この記事では私の経験から身につけたノイズの除去のノウハウをAudacity(2.4.2 Mac)を使った例で紹介します。サンプル音声は「羅生門」の冒頭の「ある日の暮れ方のことである」をなぜか二回繰り返してノイズ多めで録音しました。ノイズ多めとは言ってもPCのスピーカーで聴く分には分からないかもしれなせんが、ヘッドホンで大きめの音で聴くとはっきり分かります。ここで扱った音声はWAVE形式ですが、お聴き頂ける音声はそれをMP3に変換したものです。また、波形等の画像はクリックすると大きめのサイズで開きます。

除去前の音声波形
除去前の音声波形

以降、ノイズの種類による除去方法を詳しくご紹介します。

定常ノイズの除去

PCのファンなどの環境音が定常的にマイクに入って声の背景に「サー」とか「ブーン」とか聞こえてしまうことがあります。こういったノイズを一括して除去、あるいは低減することがAudacityでも出来ます。原理は、@ノイズをプロファイリングして、A全体の音声からプロファイリングしたノイズ成分を引き算して減らす、ということです。とはいえ、定常的といってもムラがありますから、除去しきれなかったり必要な成分から余計に引いてしまったりと完璧ではありませんがかなり効果的です。

さて、具体的にAudacityの操作をご説明しましょう。まず、突発的なノイズのない安定した無声部分を探して選択し、メニューから[エフェクト]-[ノイズの低減]。

audacity_定常部分を選択

「ノイズの低減」ウィンドウが開かれますから、ステップ1の[ノイズプロファイルの取得]をクリック。

audacity_定常ノイズをプロファイリング

今度はノイズを除去する範囲を指定します。一括して除去したいので波形の全部を選択します。

audacity_全体を選択

そして、再びメニューから[エフェクト]-[ノイズの低減]。

audacity_定常ノイズ除去を実行

今度はステップ2です。設定が色々ありますが、分からなけれればデフォルトのまま「OK」をクリック。

audacity_定常ノイズ除去後

これで定常ノイズの低減が出来ました。元の音声の定常ノイズは余り多くないので分かりにくいかも知れませんが、波形のジリジリした部分が少なくなっています。

無声部分のノイズの除去

無声とはここでは文と文との間のように声を発していない状態を指します。声以外の音が鳴っている可能性もあるので無音とは区別します。このときのリップノイズ、ブレス音、声門閉鎖音(*)、飲み込み音、ペーパーノイズ、その他突発的な環境音等を除去します。やり方は何通りかあります。

(*私の場合、緊張が原因で発語の直前に一瞬躊躇して声門を閉めたりして声門閉鎖音が出ることがあります。)

  1. ノイズを切り取ってしまう
  2. 無声の範囲を完全に無音化してしまう
  3. 定常音(声を出していない時にマイクが自然に拾う音、その他の電気的なノイズなども含む)をコピーする

一つ目の方法は、切り取ることにより無声部分が短くなっても無視できるクリック音などの短いノイズの場合に向いています。
二つ目は定常音が小さい時に使えます。目安としては声を出している部分で定常音の存在が気にならなければOKでしょう。定常ノイズが多い場合に完全に無音化してしまうと、発声部分でいきなりノイズが重なって聞えて不自然です。そのような場合は三つ目の方法が適しています。

では、下の図で示すノイズをそれぞれの方法でどう除去するかを説明します。

audacity_除去大将ノイズ
除去する箇所
(1)ノイズを切り取る

ノイズ部分が無視できる程度に短ければ、カットしてしまいます。ノイズ部分を選択してメニューから[編集]-[削除⌘K]、またはDELETEキー押下。切り取り([編集]-[切り取り⌘X]、または切り取りボタンをクリック)でもいいですが、この場合はカットした部分がクリップボードに保存されます。

audacity_ノイズカット前
ノイズ範囲を指定してカット
ノイズ部分カット後のAudacity画面
ノイズ部分カット後
(2)無声部の無音化

無声部分を範囲選択し、無音化機能で無音化します。メニューから[編集]-[特殊な削除・切り取り]-[無音化⌘L]、または無音ボタンをクリックします。

無音化範囲を指定したAudacity画面
無音化範囲を指定して無音化
範囲指定して無音化した後のAudacity画面
無音化後
(3)定常音のコピー

ノイズを消したい範囲と同じ時間幅の定常部分を範囲指定してコピー(メニューから[編集]-[コピー⌘C]、またはコピーボタンをクリック)した後、消したい範囲を選択して貼付ける(メニューから[編集]-[ペースト⌘V]、または貼付けボタンをクリック)。

コピー元の範囲を指定したAudacity画面
コピー元の範囲を指定してコピー
置換え対象範囲を指定したAudacity画面
置換え対象範囲を指定して貼付け
置換え後のAudacity画面
置換え後

以上の三通りを上手く使い分けましょう。他にも「ノイズの除去」「クリックノイズの除去」などのエフェクトもありますので試してみて下さい。