この記事群は自宅で朗読やナレーションをより良い音で録音(や配信)するための知識を紹介していきます。とはいえ、知識や情報を紹介しているサイトは他にもたくさんあります。ですからそういった内容は他に任せて、ここでは筆者の考え方を提示することを重視していきます。
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音声をマイクから取り込み、聴き手に届ける、あるいは自分で聞くまでの流れを説明します。
一般的にオーディオインターフェースにはAD変換とDA変換の両方の機能が含まれます。また、PCにもマイク・AD変換機能・DA変換機能・スピーカーが内蔵されていますが、音質が良いとは言えないので外部の機器を使うこととします。
AD変換機能を内蔵したUSBマイクという物もあります。また、ハンディーレコーダーの中にも性能の良いマイクを備えた物が多くあり、これを使うという選択もあります。
いきなりですが、あなたの予算など考えずにおすすめの構成を組んでみます。
機器名 | 品名 | 価格 | 説明 | 他の選択 |
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マイク | MXL V67G-HE | 15,000円 | コンデンサー型。ショックマウント、ポップガード、ケース付属 | ダイナミックマイクならばSHURE BETA57A |
オーディオインターフェース | Focusrite Scarlett Solo | 13,000円 | マイクプリアンプに定評のブランド。特に海外の宅録者に人気。 | STEINBERG UR22 mkII |
ヘッドホン | CLASIC PRO CPH7000 | 4,500円 | 1万円以上の物には及ばないが充分な音質 | 安さに不安があるならばSONY MDR-CD900ST |
マイクスタンド | RODE PSA1 | 14,000円 | 卓上アーム型の中でも信頼性の高い一品 | たまにしか録音しないのなら卓上型 |
マイクケープル | CANARE EC03-B | 2,000円 | XLRメス-XLRオス 3m | 安いの |
波形編集ソフト | Audacity | 無料 | WinでもMacでも使えて実績充分 | 有料のものが色々 |
合計 | 48,5000円 | |||
良質な録音のためにはできるだけ良いマイクを選びたいですね。そもそも、良いマイクとはどんなマイクでしょう。それは必要な音だけをきれいに(正確に、魅力的に)取り込むマイクだと私は考えます。ノイズを拾わないのはもちろん、その音源の持ついちばん欲しい音の成分をしっかりと取り込むことが重要です。つまり、絶対的な良いマイクというものはなく、音源との相性が求められます。
では、朗読やナレーションの場合、いちばん欲しい成分とはどんなものでしょうか。ひとつは心地よい「音」。人の声に含まれている幅広い周波数を繊細に拾うこと。もう一つは「言葉」として聴き取りやすい成分。語音として明瞭で説得力の感じられる音です。これらの両立は意外と難しく、どちらを重視するか意図を持って選択しなればならないことも多いでしょう。
たとえばiPhoneの内蔵マイクは人の声の聴き取りやすさを重視してチューニングしている、つまり後者に特化していると言えるかもしれません。
一般的に使われているマイクはダイナミックマイクというやつです。カラオケやイベントの司会などで使っているのは間違いなくこのタイプでしょう。
朗読やナレーションの音声を拾うには、やはり繊細に拾ってくれるマイクが欲しいです。プロのスタジオ録音の現場ではコンデンサーマイクが常識。コンデンサーマイクの特徴は、
近接効果とは、音源をマイクに近づけるほど低域が強くなる効果です。ダイナミックマイクは近接効果を発揮する前提で近づけて使うのが基本です。こうすることにより、より太く・前に出る音になります。逆に言うと、距離をとりすぎると存在感の弱い音になりがちです。また、マイクとの距離の変化が音質(低域の強弱)に影響を与えやすいので、一定の距離を保つ必要性が高いです。
これに対し、コンデンサーマイクはダイナミックマイクよりも距離をとって使うのが普通です。
あくまでも私の主観ですが、ダイナミックマイクは芯・圧のある音、コンデンサーマイクは細やかに包み込む音という印象です。
ここまで書いていたコンデンサーマイクは実はDCバイアス型を指しています。これ以外にも「コンデンサー」と名の付くマイクがあり、広義ではコンデンサーマイクに含まれることも多いです。それ故、誤解や混乱を招くこともしばしばあるのでここではっきりしておきましょう。
よくあるのが「高価なはずのコンデンサーマイクがこんなに低価格」と思って購入したら実はエレクトレットコンデンサーマイクで値段相当の性能でしかなかったという話。「コンデンサーマイク」という言葉に目が眩まないように気を付けましょう。
コンデンサーマイクにおいて振動を受ける部分をダイアフラムと言い、大きいほど感度が良く、小さいほど高域がシャープになります。人の声にはラージダイアフラムが向いているようです。
ラージダイアフラムのマイクは殆どは横方向から音を拾うようになっています。これをサイドアドレスといいます。よく間違えられます。Amazonなどでは販売者でさえ分かっていない例があるので注意が必要です。
※Blue Microphones のサイトより画像を借用
「いい音で録るならコンデンサーマイクでしょ」と言いたいところですが、それはいい音源といい環境が揃ってのこと。そうでない場合はダイナミックマイクという選択も充分あり得ます。以下の点を考慮しなければいけません。
ということを考えるとこうなります。↓
性能と価格は比例すると仮定し、マイクの種類毎の価格帯と適性周波数範囲の傾向を図にしてみました。(筆者の個人的印象による)
レビューでよく聞く「ホワイトノイズ」とはYouTubeやAmazonのマイクレビューでホワイトノイズが多いとか少ないとかいうことをよく耳に・目にします。しかし、これは恐らく間違った使い方です。
まず、用語の定義の問題。そもそもホワイトノイズはすべての周波数で等しいエネルギーを持たせた人工的な音声です。意図せずマイクに乗ってしまうものではありません。ホワイトノイズに特性の似た「サー」というノイズを指しているのでしょうか。
もう一つは、ノイズの聞こえる量でマイクの性能を語っていいのかという問題。感度が良ければノイズもしっかり拾いますから、逆に感度の良さの結果としてのノイズかもしれません。指向性の狭さを謳ったマイクなら「ノイズガー、性能ガー」と言うのも分かります。また、完全無音の環境でマイクそのものから発している音を測定したのならばマイクの性能として判断しても差し支えないでしょうけど。
買ったマイクが思ったよりもノイズが多く入るという場合はまずマイクの選択が良くなかったのではないかと疑ってみましょう。いや、買う前に正しい選択をしましょう。環境を最適化しましょう。
コストパフォーマンスで選んだ私の一押しはMXL V67G-HEです。
MXL V67G-HE | |
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タイプ | コンデンサー |
価格 | 15,000円 |
付属品 | ケース、ショックマウント、ポップガード |
特徴など | 海外ではDTM・Podcast系でよく使われている |
使用実績 | 色違い(緑/金)で有 |
RODE NT1-A | ||
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![]() |
タイプ | コンデンサー |
価格 | 30,000円 | |
付属品 | ポップガード付きショックマウント、マイクケーブル | |
特徴など | 宅録コンデンサーマイクの定番 | |
使用実績 | 有 | |
audio-technica AT2020 | ||
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タイプ | コンデンサー(バックエレクトレット) |
価格 | 10,000円 | |
付属品 | 専用スタンドマウント(スタンドに付けるためのアダプター)、マイクポーチ | |
特徴など | このメーカーは癖のない音が特徴。上位機種にAT2035、AT2050など | |
使用実績 | 無 | |
AKG C214 | ||
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タイプ | コンデンサー |
価格 | 36,000円 | |
付属品 | ショックマウント、ウィンドスクリーン(スポンジカバー)、ケース | |
特徴など | スタジオ定番マイクC414の流れを汲む | |
使用実績 | 無 |
雑音の拾いにくさで選んだ私の一押しはSHURE BETA57Aです。
SHURE BETA57A | |
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タイプ | ダイナミック |
価格 | 13,000円 |
付属品 | マイクホルダー、マイクポーチ |
特徴など | SM58より高域明瞭で指向性が狭い |
使用実績 | 有 |
SHURE SM58 | ||
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![]() |
タイプ | ダイナミック |
価格 | 11,000円 | |
付属品 | マイクホルダー、マイクポーチ | |
特徴など | ダイナミックマイクの超定番。BETA58Aという選択もあるが汎用性を考えるとこちらか | |
使用実績 | 有 | |
BEHRINGER XM8500 | ||
![]() |
タイプ | ダイナミック |
価格 | 2,500円 | |
付属品 | マイクホルダー、マイクポーチ | |
特徴など | SM58のコピーモデル。とりあえず安いのでやってみようというならこれ | |
使用実績 | 有 | |
SHURE SM7B | ||
![]() |
タイプ | ダイナミック |
価格 | 50,000円 | |
付属品 | ||
特徴など | ナレーション向けのハイレベル機。出力が弱いのでCloudlifter CL-1との併用が望ましい(これも高価)。 | |
使用実績 | 無 |
オーディオインターフェースも必要なく、PCにUSBケーブルを挿すだけで、とにかく手軽なのがいいところ。短所は機種が少ないことでしょうか。
audio-technica AT2020USB+ | ||
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![]() |
タイプ | コンデンサー(バックエレクトレット) |
価格 | 16,000円 | |
ヘッドホン端子 | 有 | |
付属品 | 簡易マイクホルダー、簡易マイクスタンド、USBケーブル、マイクポーチ | |
特徴など | 音質はAT2020と同等と思われる | |
使用実績 | 無 | |
マランツプロ MPM1000U | ||
![]() |
タイプ | コンデンサー(バックエレクトレット) |
価格 | 7,000円 | |
ヘッドホン端子 | 無 | |
付属品 | 簡易マイクホルダー、USBケーブル | |
特徴など | この価格でオーディオインターフェース内蔵でそこそこの性能。上位機種にMPM2000U | |
使用実績 | 有 |
USBマイクはポッドキャストや簡易的な録音向けかなと私は思っています。他にもBlue YetiやAKG LYRAやRODE NT-USBなどもありますが、机の上にドーンと置いて配信するような用途で考えられているようで、「原稿や台本どこに置くんや!?」などと考えてしまいます。
ダイレクトモニタリングマイクが拾った音をモニターする場合、デジタル変換されてPCに入った音声を再度アナログに戻してヘッドホンで聴くと遅延が生じます。それを避けるために、デジタルに変換する前の音声をモニター出来るようにすることをダイレクトモニタリングと言います。USBマイクの中にはヘッドホン端子を備えてダイレクトモニタリングを可能とした物も多いです。
一押しはFocusrite Scarlett Soloです。
Focusrite Scarlett Solo | |
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価格 | 13,000円 | 分解能 | 最大192kHz/24bit | 接続 | USB2.0 |
特徴など | マイクプリアンプで定評のあるメーカーで海外の宅録者によく使われている。1チャンネルで不足なら上位のScarlett 2i2もある |
使用実績 | 有 |
STEINBERG UR22 mkII | ||
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![]() |
価格 | 16,000円 | 分解能 | 最大192kHz/24bit | 接続 | USB2.0 |
特徴など | 低価格品の定番とも言われている | |
使用実績 | 無 | |
SOLID STATE LOGIC SSL2 | ||
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価格 | 29,000円 | 分解能 | 最大192kHz/24bit | 接続 | USB2.0 |
特徴など | 伝統あるミキシングコンソールメーカーによる初の小型機 | |
使用実績 | 無 |
必須の機能は+48Vのファンタム給電、ダイレクトモニタリング機能あたりでしょうか。分解能はこれからは96kHz(サンプリング周波数)/24bit(量子化ビット数orビット深度)以上は欲しいです。たとえ最終データが44.1kHz/16bitやMP3だったとしても録音や編集はできるだけ高分解能のほうがいいと思います。
また、分解能以上に大事なのはマイクプリアンプの性能ではないでしょうか。マイクの信号は非常に弱いのでマイクプリアンプで増幅する必要があります。このとき、ただレベルを上げればいいわけではなく、デリケートな信号をいかに優しく受けてやるか、その受け方が音に影響を与えるようです。おすすめに上げた製品はいずれもマイクプリアンプの設計に定評のあるメーカーです。